「39歳の私は、専業主婦で子どもが2人いると思っていました(笑)」
そう話すのは、タイ・バンコクで暮らして8年になる安田優里さん(仮名・39歳)
25歳で結婚し、31歳で離婚。離婚後、気分転換のために訪れたバンコクを気に入り、帰国後すぐに現地での仕事を探し始めました。そして、わずか3カ月後にはタイへ。
20代のころに思い描いていた39歳とは、まったく違う人生になりました。
それでも安田さんは、「今の人生は面白い」と笑います。
離婚、海外移住、一人で暮らすこと、老後への不安。そして、これからの人生について聞きました。
【安田優里さん(仮名)のプロフィール】
年齢:39歳/職業:貿易事務/バンコク在住
※プライバシー保護のため、仮名で掲載しています。
離婚後、「もっと解放されたい」と31歳でタイへ

――今はバンコクでどんな仕事をして、どんな生活をしていますか?
仕事は貿易事務です。家から電車で10分くらいのところにあるオフィスに通って、週5日働いています。
休みの日は買い物をしたり、家でダラダラしたり。日本で働いていたころと、普段の生活スタイルはそんなに変わらないですね。
ただ、まとまった休みが取れたら旅行にはよく行きます。そこはタイに来て大きく変わったところかもしれません。
――そもそも、どうしてバンコクで働くことになったんですか?
25歳のときに結婚して、31歳で離婚したんです。
離婚した直後は精神的にかなりボロボロで、「海外にでも行ってリフレッシュしよう」と思って。そのとき旅行先に選んだのがバンコクでした。
そうしたら、バンコクが気に入りすぎちゃったんですよ(笑)
「ここで暮らしてみたい」と思って、日本に帰ってからすぐに「バンコクで働く方法」とネットで調べまくりました。
求人が思っていた以上にたくさんあったので、何社か応募しました。私はタイ語も英語も話せなかったので、本当にダメ元です。
でも、そのうち1社から採用してもらえて。そこからは、あれよあれよという間に話が進んで、3カ月後にはバンコクにいました(笑)
――離婚したことが、バンコクで働くことの後押しになったってことですか?
それはかなりあったと思います。
離婚そのものはつらかったんですけど、でも同時に、「あ、これから自分1人で何でも決めていいんだ」みたいな自由な感覚になって。
それで勢い余って、日本を飛び出しちゃったんだと思います(笑)
――結婚してたら、バンコクへ行ってないですか?
はい。たぶん行ってないです。話し合うっていうのが苦手で。だから私、本当に結婚生活が向いてなかったんですよね。
離婚してから8年以上経ちますけど、「また結婚したいな」と思ったことはないですね。
――「結婚生活が向いていなかった」と感じたのは、どんなところですか?
離婚した原因は、たぶん積もり積もってのことなんですが、毎日のようにケンカすることに耐えられなくなったことですかね。恋愛結婚だったので、最初はもちろん楽しかったんですよ。でもそのうち、エアコンの温度とか、休みの日の過ごし方とか、些細なことでケンカするようになって。
今思えば、私も相手に多くを求めすぎていたんだと思います。「夫なんだから、こうしてほしい」という気持ちが強かったんですよね。それで、一緒にいること自体にすごくストレスを感じるようになって。最終的には「少し離れよう」ということになり、結局は離婚しました。
私の場合、プライベートまで相手に合わせて生活するのが難しいのかもしれません。一人暮らしが本当に楽なんですよ(笑)
一人だと、「今日何食べる?」「休みの日に何する?」「どこに住む?」って、全部自分で決められるじゃないですか。
そうやって、自分のことを全部自分で決められることが、幸せです。
――実際にバンコクへ行くと決めたとき、不安はありませんでしたか?
意外となかったです。
「もし合わなかったら、すぐ日本に帰ればいいや」と思っていたので(笑)
「一度行ったら絶対に成功させなきゃ」と考えていたら、怖くて行けなかったかもしれません。でも私は「嫌だったら帰ろう」くらいに考えていました。
――ご家族や友人の反応はどうでしたか?
母は大賛成してくれましたが、父には反対されました。
親には心配をかけたと思います。でも今振り返ると、反対されたからといって諦めなくて本当によかったです。
友達には、バンコクに行ってから事後報告したのを覚えています(笑)
元夫には何の連絡もしていません(笑)
――お父さまに反対されても行けたのは、なぜだったのでしょう?
「行く」って決めていたので、もう相談というより報告でしたね。だから、反対されても賛成されても行くつもりでした。
それに、もう31歳だったのでいい大人ですからね。離婚も経験してますし(笑)自分のことは自分で決めます。
20代で想像していた39歳とは、まったく違った

ーー39歳で今の生活をしていることは、20代で想像していましたか?
全っ然、想像していなかったです!
そもそも海外移住なんて、お金持ちとか、特別な才能がある人だけがするものだと思っていましたから。
20代のころに想像していた39歳の私は、「専業主婦で、子どもが2人いて、庭の広い一軒家に住んで、大きな犬を飼っている」です(笑)もちろん日本です。
現実と全然違いますよね(笑)
――思い描いていた人生と違うことに、不安や焦りを感じた時期はありませんでしたか?
離婚した直後はありました。
友達が結婚したとか、子どもが生まれたとか聞くと、「私だけ人生を逆走してない?」と思ったこともあります。
でも、タイに来てから、そういう感覚はかなり薄くなりましたね。
いろいろな国の人と出会うようになって、「人生って本当に人それぞれなんだな」と思うようになったんです。
例えば、半年間は世界中を旅行して、残りの半年で1年分の収入を稼ぐ人がいたり。世界中のお金持ちと知り合いで、いろいろな国の豪邸を転々としながら暮らしている人がいたり。自分で撮った写真を売って稼ぎながら、世界一周している人もいました。
「そんな生き方もあるんだ!」ってワクワクしちゃいますよ。
本当にいろんな人に出会って、価値観がガラリと変わりましたね。
今では、「人と同じ人生じゃ面白くないよね」とまで思えるようになりました(笑)
――海外で一人で暮らしていて、孤独を感じることはありませんか?
孤独はあまり感じないですね。タイって、そこら中に屋台があって、外がいつもガヤガヤしてるんですよ。
屋台の人も3回くらい続けて行けば、家族みたいに温かく接してくれます。「仕事行ってたの?」とか「今日は休み?」とか、すごく話しかけてくれるんですよ。
だから、一人で暮らしていても、あまり孤独を感じないのかもしれないですね。
ただ、両親のことを考えると「元気かなぁ」と思うことはあります。なので、週に3回くらいLINEでビデオ通話しています。
――日本に帰国したいと思ったことはありますか?
1回だけ、本気で帰国したいと思ったことがあります。
3年くらい前に、私がいつも行くデパートで銃撃事件があって、観光客が亡くなったんですよね。
その事件を知ったときは、「怖い! 日本に帰りたい!」って本能的に思いました。「異国の地で命を落としたらどうしよう。親が悲しむ!」って、パニックになって。
でも、強烈に本帰国したいと思ったのは、その1回きりですね。
先のことは分からないし、先のことばかり考えたくない

ーーこのままタイに住み続けたいですか?それとも、いずれ日本に帰りたいですか?
今のところ、帰国する予定はありません。
すごく楽しく生活していますし、タイが自分に合っているので。
ただ、50歳、60歳になったときにもタイにいるかと聞かれたら、それは分かりません。
別の国に住んでいるかもしれないし、日本に帰っているかもしれないですよ。
でも、そんな先のことを今から考えても分からないじゃないですか。
だから、老後への備えはしつつ、今を楽しもうと思っています。
――具体的に、老後への備えとしてどんなことをしていますか?
まずは無駄遣いをしすぎないで、お金を貯めることですね。
何をするにも、ある程度のお金は必要だと思うので、定期預金などで貯蓄しています。タイの定期預金金利って日本よりいいんですよね。
あと、バンコクは東京に比べると家賃がかなり安くて、固定費も抑えられてます。今は、27階の広めの1LDKで日本円で6万円くらいです。駅徒歩1分で、プールやジムも付いてるのも気に入っていますね。
それと気をつけてるのは健康です。
不摂生が原因で病気になって誰かに迷惑をかけるのが嫌じゃないですか。
タイの料理は味が濃かったり、糖分が多かったりするものもあるので、毎日外食するのではなく自炊もします。日本食のスーパーで納豆を買ったりもしていますよ。
――独身で年齢を重ねることに、不安はありますか?
独身であることに不安はまったくないです。
たまに「独身だから将来が不安」っていう人もいるんですけど、独身でも結婚していても、将来が安泰とは限らないと思うんですよね。
夫が先に亡くなることもあるし、途中で結婚生活がうまくいかなくなって、私みたいに離婚することもあるし。
だから、「結婚していれば安心」とはあまり思わないですね。
――今の生活で「これがあるから楽しい」と思えるものは何ですか?
旅行ですね。
タイはLCCも多くて、国内はもちろん、周辺国にも比較的行きやすいんです。
ベトナムやラオス、マレーシアには何度も行きました。
バンコクには大きな空港があるので、日本からだと少し行きづらい国にもアクセスしやすいんですよ。
2カ月に1回くらいは、どこかへ旅行していると思います。
タイに来てから20カ国以上は行きました。
これからも旅行を続けたいというのは、私がタイに住んでいる理由の一つですね。
――旅行の醍醐味って何ですか?
私、知らないものを見るのが好きなんだと思います。
景色もそうだし、食べ物もそうだし、現地の人を見るのも面白い。
「こんなところで、こんなふうに暮らしている人がいるんだ」と知ると、自分が今まで当たり前だと思っていたことが、全然当たり前じゃなかったと気づくんですよね。
そういう経験をするたびに、ますます自由になれる気がします。
ーー今までの人生で「これはやってよかった」と思う選択はありますか?
それはもう、タイに行こうと決めて、本当に来たことです。
過去の自分に、「グッジョブ!」と言いたいですね(笑)
あそこで行動して本当によかった。
もし言い訳してタイに来てなかったら、一生後悔したと思います。
あと、今となっては結婚したこともよかったと思っています。
結婚したからこそ、「私は結婚生活があまり向いていないんだ」と分かったので。
ただ、離婚は精神的にかなりきつかったですね。
もう二度と経験したくないです(笑)
ーー逆に、「あのときこうしておけばよかった」と思うことはありますか?
いっぱいありますよ! 数えたらキリがないです(笑)
10代のころにもっと勉強しておけばよかったとか、「あのとき好きだった人に告白していたら、どうなっていたんだろう」とか。
でも、そのときの選択は、そのときの自分が考えて決めたことじゃないですか。
だから、昔の自分を否定するのはあまりしたくないですね。
「これからどうなるか分からない」のも面白い

ーーこれからの人生でやってみたいこと・楽しみなことはありますか?
いっぱいあります(笑)
まだ行ってみたい国がたくさんあるので、そこへ行くのが楽しみです。今行きたいのは、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、エチオピアですね。
旅行先でいろんな人と知り合うのも好きです。本っ当にいろんな人がいて、出会うたびに自分の視野が広がっていく感じが好きなんですよね。
あと、語学ももっと極めたいです。今は英語とタイ語を話すので、これから中国語とスペイン語も勉強したいですね。
英語、中国語、スペイン語が話せたら、かなり多くの国の人とコミュニケーションが取れるじゃないですか。それも楽しみです。
20代のころは、「30歳までに結婚して、何歳までに子どもを産んで……」みたいに、人生にはある程度決まった順番があると思ってたんですよ。
でも今は、「40歳だからこれはできない」とか「50歳だからもう遅い」とか、あまり思わなくなりましたね。
やりたいことができたら、そのときやればいいかなって。
ーー日本の独身女性に言いたいことや伝えたいことはありますか?
私、本当に好き勝手に生きているので、偉そうなことは言えないんですけど(笑)
強いて言うなら、「やってみたい」と思っていることがあるなら、一度やってみてもいいんじゃない? ということですかね。
やりたいと思っているのにやらなかったら、私はきっと後悔すると思うんですよね。
後悔するのって嫌じゃないですか。
もちろん、何でも無茶をすればいいという意味ではないですよ。
でも、たった1回の人生なんだから、自分がやってみたいことをやってもいいと思うんですよね。
――最後に。39歳の今、自分の人生って面白いですか?
面白いです!
タイ人は陽気な人が多くて、あまりウジウジ悩まないというか(笑)私も影響されているのか、以前よりずいぶん陽気に生きるようになりました。
実は日本にいたころは、結構ネガティブな人間だったんですよ。
でもタイに来て変わったのが自分でも分かります。
想像していた39歳とは、全然違う人生になったし、これからもどんな人生になるのかわからないけど、今は、その「分からない」っていうところも面白がっています(笑)
20代のころに思い描いていた39歳とは、まったく違う今。
離婚後に訪れたバンコクとの出会いをきっかけに、人生は思いもよらない方向へ進んでいきました。
「これからどうなるか分からないのも面白い」と笑う安田さん。本当に楽しそうに話すので、聞いているこちらまで元気をもらえました。