「このまま何も変わらず年を取るのが嫌だった」40歳で17年勤めた会社を辞め、タイ古式マッサージの世界へ

今回お話を聞いたのは、タイ古式マッサージのセラピストとして働く42歳の独身女性です。

実は彼女は、2年前まで会社員でした。新卒で入った会社で17年間事務職として働いた後、40歳で退職。未経験だったタイ古式マッサージの世界へ飛び込みました。

17年間勤めた会社をなぜ辞めたのか。40代で未経験の仕事を始めて、実際に働いてみてどうだったのか。収入や会社員時代との違い、これからについて聞きました。

【古坂留美さん(仮名)のプロフィール】

年齢:42歳/職業:セラピスト/東京都在住
※プライバシー保護のため、仮名で掲載しています。

新卒から17年。ずっと同じ会社で働いてきた

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――新卒で入った会社では、どんな仕事をしていたんですか?

ざっくりいうと事務です。オフィスで裏方的な仕事をしていました。営業さんが外回りに集中できるように、書類を作ったり資料をまとめたり、電話や来客の対応をしたりする感じですね。基本はパソコンをカタカタやってました。

――その会社には何年くらいいましたか?

新卒で入ったので、23歳から40歳まで17年間いました。最後はお局でした。でも優しいお局でしたよ(笑)

――30代の頃は、40代になって会社を辞めていると思っていましたか?

うーん、どうなんでしょう。40歳を過ぎても会社で働き続けているとは思ってなかったかもしれないです。35歳を過ぎたあたりから「これでいいのか私」という思いはずっとあったので。その頃はまだ結婚するかもって思ってましたし。

――35歳くらいから「これでいいのか」と思っていたのに、実際に辞めたのは40歳ですよね。「転職しよう」と決めたきっかけは何だったんですか?

40歳になったときに、結婚を諦めたっていうのが大きいです。結婚に年齢は関係ないし、出産もまだできるかもしれないけど、40歳を過ぎると結婚も出産も現実は甘くないんですよね。結婚も子育てもしないで、このまま何も変わらない生活で年だけ取るのが嫌だったんです。それで、まずは仕事を変えてみようと思いました。

――正社員を辞めることに、怖さはありませんでしたか?

ありました。新卒からその会社しか経験がなかったので、ほかの会社や仕事がどんな感じなのかも分からないし、自分が通用するのかも不安でした。あと、ずっといた会社なので、辞めるときは寂しかったです。

――周りの人には相談しましたか?家族や友達はどんな反応でしたか?

親は「やりたいようにやったらいいんじゃない」という感じでした。友達はすごく応援してくれました。「いろいろ経験したほうが絶対楽しいよ」って。

ーー退職するとき、お金や今後の生活についてどのくらい準備しましたか?

私は実家暮らしで、幸い貯金もあったので、生活への不安はそれほどなかったです。1年くらいは仕事をしなくても大丈夫なくらいの貯金はありました。

40代で会社を辞めて、マッサージの世界へ

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――なぜタイ古式マッサージだったんですか?

たまたまです(笑)マッサージやセラピストの仕事を探していて、待遇や勤務地がちょうどよかったのがタイ古式マッサージだったんです。

どうせやるなら、手に職をつけられる仕事がいいと思っていて、それならマッサージがいいかなと思ったんです。

――以前からマッサージや体のことに興味があったんですか?

はい。前からマッサージすることは好きでした。親や友達にマッサージしてあげてましたね。

――技術はどこで、どのくらいの期間をかけて覚えましたか?

入社してから1カ月くらい研修を受けました。店舗とは別のところで、修行のような感じで専門の先生が教えてくれました。スクールに通ったら何十万円もしそうなので、それを無料で教えてもらえたのはラッキーでした(笑)

ーー40代から未経験の仕事を始めることに、「今からできるかな」という不安はありましたか?

そういう不安はあまりなかったです。面接に受かった時点で、もうやるしかないと覚悟を決めたので、不安より「やらなきゃ」という気合いのほうが大きかったです。

――実際に働き始めて、どうですか?

想像以上に楽しいです。自分にはマッサージの仕事が合ってたみたいで、毎日楽しく働いています。

前の仕事では、基本的にパソコンに向かって作業していたので、今は目の前のお客さんが喜んでいる姿を見られるのが嬉しいですね。人の役に立っていることを、その場で実感できるのも嬉しいです。

――大変なことなどはなかったのですか?最初から楽しかったですか?

研修のときから楽しかったです。ただ、最初の頃は、体の使い方が正しくなかったのか、筋肉痛になったり、膝がアザになったりしてました。そのときは少し不安になりましたけど、施術に慣れてきたら、コツがわかって自分の体が痛くなることはなくなりました。

――事務職と比べて、収入はどう変わりましたか?差し支えない範囲で教えてください。

収入は、前の仕事の3分の2くらいになりました。でも、収入が下がることは最初から分かっていて自分で選んだので、それほど気にしていません。仕事としては、今のほうが将来につながると感じているので。

――収入が3分の2になって、実際の生活で変えたことはありますか?

使うお金は変わらないですね。というか、変えられないです。好きなものが買えなかったり、好きなものが食べられなかったりするのは、私にとってストレスなので。

その分、貯金する額が減りました。将来のことを考えたら貯めておくべきなんでしょうけど、今は仕方ないかなって思っています。

――どんなところが、将来につながると思いますか?

前の仕事は、そのうちAIに奪われるんじゃないかと私は感じていました。その点、マッサージは体を使う仕事なので、AIには奪われないと思ったんです。マッサージロボットも開発されてるみたいですが、やっぱり人の手の温もりは求められ続けるんじゃないかなって思います。

それに、50代、60代になったときに「マッサージを10年やってます」って胸を張って言えたら、自分のことを誇りに思えそうなんです。

ーー今後、独立なども考えていますか?

はい。ずっと雇われて働くのは難しいかなと思っています。結構体力を使うので、60歳くらいになったときに、若いスタッフと同じように働けるかというと難しいと思うんです。

なので、自分で働くペースを選べる独立も考えています。マッサージなら部屋の一室でもできるので、現実的かなと。

このまま独身で、一人で寂しいと感じることもあると思うので、そんなときにお客さんと話せたらいいな、というのもあります。

会社を辞めて2年。42歳の今思うこと

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――事務職から体を使う仕事に変わって、体にも変化はありましたか?

マッサージの仕事を始めてから、目に見えて分かるくらい筋肉がついて、体脂肪が5%も落ちました。

タイ古式マッサージって、自分も体をゆっくり動かすので、自分自身もヨガをしているような感じになるんですね。

だから毎日何時間もヨガしてる気分です(笑)

ーー転職したことで、仕事以外の生活にも変化はありましたか?

土日出勤になって、平日休みになったくらいですかね。平日はどこも空いていていいってことに気づきました。

あとは、よく食べるようになりました。動くからお腹が空くんですよね。でも、食べてもまた動くので、今のところ太ってないんです。それは嬉しいですね。

――今の生活は楽しいですか?会社員だった頃と比べるとどうですか?

今の仕事は気に入ってるし、楽しいです。会社員時代と比べると、目標ができて毎日にハリが出てきた感じはあります。

前は「これからどうしよう」がいつも付きまとっていたので。収入面では安定していたけど、どこか満たされない感じがあったんだと思います。

――会社を辞めて2年経って、「やっぱり会社員のほうがよかったな」と思ったことは一度もありませんか?

前に、男性のお客さんに「おばさんか……」って言ってるのが聞こえて、残念がられたことがあって。そのときはちょっと凹んで、「会社員のときは、こんなふうにダイレクトに言われることはなかったな」と思いました。そのくらいですかね。

ーー今後やってみたいことはありますか?

タイ古式マッサージはタイ発祥なので、実際にタイへ行って施術を受けてみたいです。現地で習えるマッサージスクールもあるみたいなので、独立する前に一度、タイに行って習ってみるのもいいかなって考えています。

ーー40代で仕事を辞めたいけれど、「今さら違う仕事なんて無理」と思っている女性に、自分の経験から話せることはありますか?

無責任なことは言えないですが、辞めたいなら辞めたほうがいいのかなとは思います。10年後や20年後に自分がどうなっていたいかを想像すると、決断がつくのかなって思います。

――42歳の今、人生は前より面白くなりましたか?

会社員をやっていたときよりは、確実に面白いです。専門的な技術が身について、自分に自信もついた気がします。

これから先、独立することを考えると、人生が開けた感じがするし、これからが楽しみにもなっています。


17年間勤めた会社を離れ、40歳で未経験の仕事を始めた古坂さん。今はマッサージの技術を磨きながら、将来は独立することや、タイで本場の施術を学ぶことも考えています。

「会社員をやっていたときより、確実に面白いです」と話す姿を見ていると、40歳から始まった新しい生活を本人が楽しんでいることが伝わってきました。

-インタビュー