結婚しないまま40代を迎えた女性から、COMPASSにはさまざまな声が寄せられます。今回は、COMPASSに寄せられた声や、同じような経験をお持ちの方々の話をもとに、編集部で構成しました。友人夫婦との何気ない会話から、老後資金について考えさせられることがあった、というお話です。ここからは、一人称の語りでお伝えします。取材・構成:COMPASS編集部
先日、友人夫婦の老後資金の相談に、なんとなく付き合うことになりました。
「うちも真剣に考えないとね」と言われて、へえ、と思いながら話を聞いていたんです。
夫婦でファイナンシャルプランナーのところに行ってきたらしく、シミュレーション結果のプリントを見せてくれました。
「夫の厚生年金に、私の分も上乗せされるらしくて」
友人が、当たり前のようにそう言ったんです。
え、と思いました。
その「上乗せ」って、何。私には関係ある話なんだっけ。
43歳、貯金127万円。正直、老後のことなんて真剣に考えたことがありませんでした。
だってまだ先の話だと思ってたし、考えたところでどうにかなる話でもない気がしていたし。
何より、「老後資金」で検索して出てくる記事は、だいたい夫婦2人世帯の話ばかりで、自分ごととして読めたことが一度もなかった気がします。
でもその日、初めて気づいたんです。
友人夫婦の老後資金の話と、私の老後資金の話は、そもそも計算式が違うんじゃないかって。
(ちなみに友人は「うちは共働きだから」ともサラッと言っていました。共働き前提の話、正直まぶしすぎる。)
日本の社会保障制度は、「配偶者と子どもがいる」前提でできている
気になって、帰り道にスマホで調べてみました。
そしたら本当にあったんです。「加給年金」というもので、厚生年金に一定の条件を満たす配偶者がいると、年金に上乗せがつく仕組みでした。
さらに、配偶者が亡くなった場合には「遺族年金」というものも受け取れるらしい。
……あれ、これ全部、私には関係ない話だ。
さらに調べていくと、もう一つ知らなかったことがありました。
会社員の配偶者で、一定の条件を満たす「扶養に入っている人」は、年金保険料を自分で払わなくても納めた扱いになる仕組みがあるらしいんです(第3号被保険者、というらしい)。
友人はまさにこれで、パート収入を扶養の範囲に抑えているとも言っていました。
一方で私は、独立してからずっと国民年金と国民健康保険を全額自分で払ってきました。
会社員時代の厚生年金部分は多少あるとしても、この先は基本的に「全部自己負担」の世界です。
税金の面でも、配偶者控除のような仕組みは最初から関係がありません。
独身だと、これらの上乗せや優遇はそもそも対象外なんですよね。悪
いことをしたわけでも、損な選択をしたわけでもないのに、最初から蚊帳の外というか。
これ、独身なら誰でも同じ条件のはずです。
さらに言うと、子どもがいる人向けの扶養控除や、児童関連の給付なども、私にはそもそも関係がありません。
配偶者控除も、扶養控除も、対象になる家族がいることが前提の制度なんだと、今さらながら気づかされました。
だとすると、「老後資金っていくら必要?」を既婚者と同じように考えること自体、なんかもう前提から違う気がしてきました。
同じ「2000万円問題」という言葉を使っていても、私たちが埋めなきゃいけない部分は、たぶんもっと大きいんだと思います。
入院も、判断も、死後の手続きも。全部、自分でどうにかするしかない
お金だけの問題でもなくて。
前に一度、体調を崩して数日入院したことがあります。
そのとき窓口で「緊急連絡先とご家族のお名前を」と言われて、地味に固まりました。
両親はもう高齢で、頼れる兄弟もいない。
結局、友人の名前を書かせてもらいましたが、あれ、もし友人も忙しい時期だったらどうしていたんだろう、と今でも時々思い出します。
手術が必要な場合は「ご家族の同意書」を求められることもあると、あとから知りました。
もし一人で判断できない状態になったら、誰が私の代わりに決めてくれるんだろう、というのは、あの入院以来、ずっと頭の片隅に残っている疑問です。
入院するときの保証人。判断力が落ちたときの財産管理。亡くなったあとの手続き。
友人なら「夫が」「子どもが」で片づく場面が、私の場合、全部自分でやるか、お金を払って誰かに頼むかの二択になるんですよね。
携帯電話の契約更新のときにも「緊急連絡先」の欄があって、毎回一瞬手が止まります。
こういう小さな場面が、積み重なると地味に応えるんです。
家族という無料のセーフティネットがない分、有料のそれを自分で組み立てるしかない。
これが、独身の老後資金の話をずっしり重くしている理由な気がします。
「そのうち誰かが」が、そもそも成立しないので。
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じゃあ、今からできることは?
厳しい話ばかりしましたが、だからこそ備え方は早めに具体的にしておく価値があるなと思いました。
まず手をつけたのは、毎年届く「ねんきん定期便」を、初めてちゃんと開いてみることでした。
恥ずかしながら、これまで封筒を開けもせず、そのまま引き出しにしまい込んでいたんです。
見てみると、これまで納めてきた保険料の記録と、将来もらえる年金額の目安がちゃんと書いてありました。
数字を見た瞬間、正直「思ったより少ない」という感想が真っ先に出てきました。
でも同時に、「知らないままより、知れてよかった」とも思ったんです。
友人の家庭は、この金額に夫の年金と加給年金が上乗せされる。
私の場合は、この金額が基本、全部です。
家賃、光熱費、食費、医療費。
一人分の年金で、一人分の生活費すべてを賄うと考えると、なんとなく思っていた「老後2000万円」という数字も、私にはもっと重く乗ってくる気がしました。
そのうえで、資産形成や保険で足りない部分を埋めていくこと。
NISAやiDeCoといった制度も、名前だけは知っていましたが、自分の場合どのくらい活用できるのかは正直よく分かっていません。
保険も、入りっぱなしで中身を見直したことがないものが一つあります。
友人みたいに「二人で相談しながら」決められない分、一人で全部決めなきゃいけないからこそ、早めに専門家に一度話を聞いておく意味は大きい気がしています。
何から手をつければいいか分からない、という状態のままにしておくよりは、まず現状を数字で知ることから始めるのが、一番負担が少ない気がしました。
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おわりに
友人と自分、同じ「老後資金の不安」という言葉を使っていたのに、中身はまるで別物でした。
気づいた瞬間は、正直しんどかったです。
でも同時に、「じゃあ自分は何をすればいいか」が、初めてはっきりした瞬間でもありました。
あのあと友人に「独身だと加給年金も遺族年金もないんだね」と話したら、「え、知らなかった」と驚かれました。
既婚者にとっても、当たり前すぎて気づかない話なんだと思います。
誰かと分け合えない分、知っておくべきことも、備えられることも、ちゃんとあります。
まずは、自分の場合の実態を知ることから、始めてみませんか。
【編集後記】 このお話を通して、編集部としても考えさせられることがありました。既婚者と独身とでは、老後資金の「前提」そのものが違う。同じように感じている方は、少なくないと思います。皆さんの体験も、ぜひCOMPASSに聞かせてください。
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